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いつもあなたのそばにいたい
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Author: 心優(mihiro)

第1話 私の憧れ

last update Last Updated: 2025-09-18 10:46:08

──2022年春

いつもの電車に揺られて、通勤する。

都内にある会社の最寄り駅、そこから徒歩5分

途中、同じ会社の人たちに会う。

「おはようございます」

「おはよう〜」

「おはようございま〜す」

朝の挨拶から始まる一日

その····のテンションで、

相手の今日の体調が分かるようになった。

欠伸《あくび》をしながら、眠そうにしている人、

物凄く大きな声で、とても元気な人、

何か急いでいるのか、小走りで走りながら挨拶する人。

そして、会社に着くと、

私の··は、今日も爽やかだ!

「おはようございます」

「おお、おはよう! ···

今日も元気だ! そして、カッコイイ!

いつも、なぜか私を下の名前で呼んでくれる。

──う〜ん、今日もイケメ〜ン

名前呼びは、めちゃくちゃ嬉しい〜

それだけで顔が綻《ほころ》ぶ

嬉しい1日の始まりだ。

椿つばきひまり もうすぐ22歳

入社して2年目の一般事務員、

去年、一部上場企業の建設工事会社、工事部に配属された。

丸1年経っても未だに··への思いは変わらないのだ。

私の··は、同じ部署で働く4歳年上の今年26歳

田上たがみ大翔ひろとさん

憧れの先輩だ。

──はあ〜今日もカッコイイ〜

なんて美しいお顔なの?

毎日拝めるなんて、それだけで十分幸せ

本当は、ずっと眺めていたいけど、そうもいかない。

それに、

決して私から告白することなど、ないだろう。

だって彼には……

会社No.1の美人彼女さんが居るのだから。

それを知ったのは、入社後1週間の研修期間が過ぎ、この部署に配属された初日だった。

同時に私は、その日、田上さんに一目惚れしたのに、告白もせずに撃沈したのだ。

─────1年前 2021年4月

同期の女子が話しているのを聞いた。

田上さんは、かなりのイケメン具合で同期の間でも有名だった。

「工事部の田上さんって、会社でNo.1の美人彼女さんが居るんだって」

「!!!」思わず目を見開いた。

──嘘!

「え? そうなの?」と、興味津々で聞いている同期の女子たち

私は、思わず「終わった……」と呟いた。

「早っ! まだ分かんないじゃん、ハハッ」

と笑っているのは、同期入社で同じ歳の美香みかだ。

「だって会社でNo.1の美人さんになんて、どう転んでも敵うわけないよ」

「そうかもしれないけど、どんな人か興味あるよね〜」

「確かに!」

見てみたいと思った。

あんなイケメンなのだから、そりゃあ隣りには、

美しい彼女さんが居ないと釣り合わない。

「どんな人なんだろうね〜」

面白がっている美香。

私は、その美人彼女さんのことが気になって仕方がなかった。

「秘書さんらしいよ」

「あ〜もうそれだけで超美人じゃん!」

「見に行く?」

「うん、行ってみようか?」

そう言いながら、お昼休憩中に秘書の方々が、

食べている広い食堂の一画を見てみた。

「うわ〜綺麗な人ばかりで、どの人か……」

と言う美香に対して、私は、なぜかすぐに分かってしまった。

「綺麗〜」と呆然と見つめてしまった。

「え?」

「私、分かったような気がする〜」

「どこ? どの人?」

私の目線の先を見ている美香。

まるでオーラのような光に包まれて輝いて見える。

あれを美しいと言うのだろう。

「なるほど〜」と美香も驚いているもよう。

「きっとあの人だよね……終わった」

「あれじゃあ、しょうがないよ、ひまり! ドンマイ!」という美香に返す言葉がなかった。

同期女子たちの間では、その美人秘書さんが彼女だという噂で持ちきりだった。

何度も廊下で2人が仲良さそうに戯れ合って話しているのを目撃されている。

────

あの時に、私の恋は呆気なく終わり、もう私にチャンスなどない! と分かってしまったのだが、

1年経った今でも私の··は、田上さんだけなのだ!

それ以上の人は、現れていない。

仕事が出来て、優しくて、見た目もイケメンで、

今まで生きて来た21年間で、私にとって最高の

推しメンなのだ。

「ひまり!」

「はい」

田上さんに呼ばれる度にドキッとする。

「悪いけど、コレ今日中に頼めるか?」

と、書類作成を頼まれる。

「はい! 頑張ります」

田上さんに仕事を頼まれると凄く嬉しい〜

もちろん私が推しの仕事を断るわけなどない。

何が何でもこなしてみせるわ。

「じゃあ、夕方戻って来るから頼むな」

「はい、いってらっしゃいませ」と見送る。

私は、あなたを見てるだけで笑顔になれるんですよ。たとえ、私の彼氏にならなくても……

俗に言う···とは違うけど、私にとっては、このやり取りが唯一の···なのだ。

ホヘ〜っと、締まりのない顔をしていると、顔を覗き込む男が……

「お前なんて顔してんだ? ハハッ」と笑う2歳年上で同期の山田

「なんだ! 山田か〜」

「なんだ! って、お前ホント失礼だよな」

「ふふ何? なんか用?」

「あ、コレ作ってくんない?」と、書類を見せる山田

すかさず私は、

「あら、ごめんなさい、先約があって〜私今日は、コレで手いっぱいなんで〜」と田上さんから預かった書類をヒラヒラさせる。

「は〜? 何が先約だよ! デートじゃないんだから、それにそんなのすぐに終わるだろうよ」

「無理無理、今から誠心誠意、心を込めて作成させていただくので……」

と、両手を振って断りを入れる。

「何だよそれ」

「ごめんなさいね〜違う人に頼んでもらえるかな〜?」と両手を合わせて笑顔で言う。

いつも私が断ると新入社員の美波ちゃんに頼む山田

「分かりました」と言いながら、新入社員だから断れず困った顔をしている。

「ふふ」

どうして、山田って、あんなキャラなんだろう。

神様ってホント不公平だわと思ってしまう。

そして、私は夕方までに田上さんの書類を完璧に仕上げた。

もちろん、私の仕事はコレだけではない。

毎日しなければならない仕事もある。

でも、何としても、田上さんの仕事だけは断らない! と決めているのだ。

夕方、5時15分の定時を過ぎた。

「ひまり〜帰ろう!」と美香が迎えに来た。

美香には昼休みに、『今日は田上さんの仕事をする』と伝えてあったので、

「ごめん、まだ田上さんが帰って来てないから、先に帰って」と言いながら、私の顔は微笑んでいる。

美香の顔も綻んでいる。

「ふふ、了解〜じゃあ又来週ね〜」

「うん、ごめんね〜お疲れ様〜」と手を振る。

ファイト! というジェスチャーで拳を握って、帰って行った美香。

何でも話せる良き友だ。

5時45分

定時から30分が過ぎた。

自分の仕事も一段落した。

「どうしようかなあ〜」と悩んでいると、

「え、お前もう仕事終わったんだろ? まだ居んのかよ」と斜め後ろの席の山田にツッコまれる。

慌てて違う仕事を机の上に広げる。

「仕事は、いくらでもあるもん」

「とか言って田上さんを待ってんだろ?」

どうして分かったんだ?

あ、そりゃあそうか……

「だってこの書類出来たから渡さないと」

「机の上に置いとけば?」

「間違いがあったら大変だから手渡さないと!」

「ふ〜ん」と山田は、笑っている。

「何よ!」

「イヤ別に……お前全部顔に出てるから面白れ〜」

「そ、そんなこと……」

何を言われようと私が田上さんを思う気持ちは、変わらない。

すると……コツコツと靴音をたてて、田上さんが帰って来た。今日は、作業着じゃなくスーツに革靴のままだ。カッコイイ〜思わずニッコリ。

「ごめん! ひまり! 出来た?」

「お帰りなさい。はい、出来てますよ! チェックお願いします」

「おお〜サンキュー」

山田の顔がニヤニヤしているのが見えたが、

今は、それどころではないので構わない。

「うん! 完璧だ! いつもありがとうな」

頭をポンポンされた。

──うっひょう〜! 凄いファンサですね

無料ただで良いのかしら? 1ポンポンいくらかしら? はあ〜猫みたいにゴロニャンしたい〜

「いえ、良かったです。じゃあ私は、コレで」と、机の上を片付けていると……

「あ、ひまり! お詫びに飯でも行くか?」と、

「え?」

──え〜! 何? 2人きり? 同伴ですか?

いや〜スッパ抜かれたらどうしよう!

誰に? そんなわけないか……

いや、田上ファンに妬かれるじゃない〜

あ、それより1番問題なのは、あの美人彼女さんか、でも、本人が良いって言ってるなら、良いのかなあ?

何度か部内の皆んなでは、食事に行ったことがあるけど、今、『ひまり!』って私だけを誘ってくれたんだよね?

「用事あるか?」

「いえ、ないです! 全然何もないです!」

両手をぶるぶる横に振りながら答えた。

「おお、良かった、じゃあちょっとだけ待ってて」

と書類を持って何処かへ行ってしまった。

うお〜〜マジ? 推しと2人で ご・は・ん!

ヤッター! と両手を挙げて今すぐ叫びたいところだよ。

早速、美香に報告、報告! とニヤニヤしながらスマホを開く。

山田がこっちを見ながら笑っている。

「くくくくっ」

「何よ!」

「だから、分かりやす過ぎ〜」

「え!」

何も言えなかった。

「良かったな」と言われ、

「ふふ」

堪えきれずに、思わず笑ってしまった。

あ、認めたことになってしまった。

今日は、金曜日、土日はお休みだ。続々と部内の人が帰って行った。

あとは、山田と私たちだけになってしまった。

山田も早く帰れ! と思ってしまう私が居る。

思わずジーッと山田を見てしまっていた。

「なんだよ!」

「いえ別に……」と、目を逸らす。

田上さんが用事を済ませて戻って来た。

「悪りい〜お待たせ〜!」

「いえ」とニッコリ笑う。

田上さんは、山田の方を見て

「おお、山田も一緒に飯行くか?」と、山田を誘った。

田上さんの優しさだ。

思わず、

──え? と思ってしまった私は嫌な女だ。

心の中では、

──頼む! 山田、断って〜!

と願っていた。

チラッとこっちを見た山田に、目を細めて凝視する。恐らく私の顔は、困ったような情け無いような変顔になっていたのだろう。

「あ、すみません、俺コレ仕上げなきゃなんで、今日は……」と断ってくれた。

──良かった〜山田〜! なんて良い奴なんだ!

ありがとう〜! 今度1度だけ仕事してあげるわ! と思った。

「おお、そっかじゃあ又今度な」

「はい、また誘ってください」

──ホント私って、イヤな女だな〜

すごくホッとしている自分が居る。

「じゃあ、行こうか、ひまり!」

「はい」

「山田、お疲れ〜」と田上さん

「お疲れ様です」

そして、山田は、私にも小声で「頑張れよ」と言ってくれた。

「うん、山田もね、お先に〜」

「おお、お疲れ〜」

「お疲れ様でした〜」と私は、深々と一礼した。

二度とないチャンスだから、

最初で最後の思い出に、今日だけは2人で話したかったんだ。

──ごめんね、山田

私たちは、エレベーターへと向かった。

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